あなたの主治医は、どうして話をきかないのか?:診察時間が短い理由を医師が解説

【はじめに】

あなたは、自分の病気や病状が不安です。前回の受診から、一旦は忘れることはできていたものの、頭の片隅には次回の受診のことがなんとなくあり、ふとした時に思い出していた。

受診当日、雨の中、バスや電車を乗り継いで時間をかけて病院を受診した。採血を待たされ、さらに採血を受けてから1時間以上も待ったのに、診察に呼ばれない。自分よりも後に来た人が診察に先に呼ばれている。ようやく呼ばれた診察は、そっけない態度の主治医でたったの5分しかない。診察終了後も会計を待たされる。そんな5分のために、半日も潰れてしまい、へとへと。そんな経験はないでしょうか?

どうして、そんなに時間を待たされる一方で、診察は短いのでしょうか?

救急外来ではない、中規模〜大規模病院の内科外来を想定し、患者視点と医者の視点を比較してみたいと思います。

【患者の視点】

かかりつけの先生から、腎臓の機能が少し悪くなってきて、〇〇病院の腎臓内科に前回、紹介をされた。血圧の薬を変更したけど、ちっとも血圧は下がらないな。腎機能を守るとか言っていたけれど、血圧も下がっていないのに守れているのかな。どうして、血圧の薬を変えたんだろう。前の診療所の先生が出してくれた、前の薬でも安いし、十分良かったのに。今日の検査は、腎機能の数値が悪くないといいな。

【医者の視点】

[外来開始前の思考回路]

今日は、忙しい外来日だ。今日も30分ごとの予約枠を大幅に超過しているな。今日は、祝日の翌日だから、採血結果が出るのも遅いんだよな。時間内に終わらすことも難しいかもしれないけど、出来るだけ頑張ろう。まず、さっと入院患者のカルテチェックと診察をして、急いで解決しなきゃいけないことを済ませてしまおう。そして、外来が終わったら、カルテを書こう。昨晩に新しく入院した患者さんの家族にも一回、電話を入れて挨拶をしておかないとな。外来診療時間が始まっていて、患者さんも到着しているけど、採血結果がまだ出ていないから、呼べる患者さんがあまりいないな。先週に採血がすでに終わっている患者さんと、検査がない患者さんをまず診察しよう。

[患者診察中の思考回路]

〇〇さんは、基礎疾患は高血圧、糖尿病と、蛋白尿を伴う慢性腎臓病と冠動脈疾患もあるな。前回、紹介元の先生が出している、カルシウムチャネル遮断薬からARB(アンジオテンシンII受容体拮抗薬)に降圧薬を変更している。慢性腎臓病が進行しており、蛋白尿(腎臓から尿に混じるタンパク質が増えている状態)もあるから、腎臓保護効果のある降圧薬であるARBに変更した。ARBに変更したことで、初期に腎機能低下が見えることもある(これを『initial dip*』と言う)。この患者さんは許容範囲だ。長期的には、良い兆候だけど、自分もドキッとするし、限られた診察時間だと患者さんに説明しきれないんだよな。ARBを増量することを考えているので、カリウムの数値も確認しよう(ARBを増量するとカリウム値が上昇するリスクがあるため)。 幸い、カリウムの数値も問題ない。血圧自体は、あまり変化はないな。血圧が上がったり、急に下がりすぎたりしなくて良かったけれど、降圧目標は、達成できていないから、今回は、ARBを増量してみよう。増やせるところまでARBを増やせたら、SGLT2阻害薬(血糖値を下げながら、 心臓と腎臓も保護する効果のある薬)も入れていきたいな。次回は、レントゲンと超音波検査も予約をしておこう。次回の栄養指導も同時に入れられる日程はないかな。

*ARBを追加すると、初期に血圧低下や腎機能低下をすることがあります。医者はこれを「initial dip:イニシャルディップ(初期の低下の意味)」と呼んでいます。腎機能が最初に悪化するように見えるので、びっくりしますが、良好な長期予後を示唆する兆候です。これは血行動態的な適応反応を反映しており、長期的な臓器保護効果と関連しています。」

Holtkamp FA, de Zeeuw D, Thomas MC, et al. An acute fall in estimated glomerular filtration rate during treatment with losartan predicts a slower decrease in long-term renal function. Kidney Int. 2011;80(3):282-287. doi:10.1038/ki.2011.79

【問題とその理由】

[待ち時間が長い理由]

・採血の待ち時間

・採血結果が出るまでの時間(1-2時間程度)

・自分の外来の診察順番(外来主治医の診療枠をどれくらい超えているか)

上記のような構造的な要素があります。ある程度、決まってしまっており、動かすことの難しい時間です。

[診察時間が短い理由]

患者さんの私生活を含め、背景を知っておくことは、病気を見る、患者を診察する上では、非常に重要で、医師側もできるだけ情報を集めたいと考えています。ただ、診療時間内に全ての患者で話を聞くことは、予約枠をすでに超えており、効率性が求められます。午前中の外来枠に30人〜50人なんてこともあります。午前中4時間を30人で割ると、一人8分の診察時間でないと終わらないということも多々あります。その時間の中には、患者さんの出入りにかかる時間、患者カルテをみて把握する時間、検査結果を印刷する時間、処方箋を出す時間などが必ず含まれます。一人の患者さんに、時間がかかりすぎると、他の患者さんをお待たせすることや他の患者さんの診療時間を短縮することが表裏一体であり、ジレンマがあります。それぞれの患者さんに、全力で最適化した診療をする必要があります。

さらに不確定要素として、

新規の患者さんが多いか、処置や入院が必要な患者さんがいるか、緊急対応が必要な患者がいるなどの場合に、外来時間がずれる場合があります。

【限られた診察時間で、患者・医師にとってwin-winになるための工夫】

[採血結果の待ち時間を短縮する方法]

・病院まで距離が近い方は、前日や1週間前などに採血などの検査を事前に受けておくのは、1つの作戦。早い時間帯は特に早く呼ばれやすい。

・通院に時間がかかる方は、検査などをできるだけ同じ日にまとめてしまい、「栄養指導や他の検査の前に採血を受けてしまう」こともいい手段です。

・同じタイミングで採血を受けても、項目の違いや、異常な数値がある場合には、検査結果が出揃うタイミングが変わることがあります。

・病状が安定しており、疾患の特殊性が少ない場合には、アクセスの良いクリニックに移ることを相談するのも1つの手です。

[診察時間を最大限活用するための工夫]

・前回からの体調の変化などをすぐに言葉に出せるようにしておく。質問したいことや伝えたいことをメモしておく。

・「血圧の推移、体重の推移」などのデータをすぐに出せるように準備しておく。

・「次回の外来が入りそうな時期のスケジュールを事前に確認」し、すぐに出せるようにしておく。主治医によって、外来診療の曜日は決まっていることが多いです。

・伝えたいことは遠慮せずにダイレクトに伝える。端的に述べることで、効率的に伝わりやすいです。

これらをすることにより、患者・医師に取ってお互いに有益な情報のやり取りをする時間を最大限有意義にすることができます。

【まとめ】

待たされる時間が長い、診療時間が短いことは、変更が難しい構造的な問題をはらんでいます。採血を受けるタイミングを工夫したり、受診時に効率よく、情報を伝達することで、診療時間内の質や効率を上げることができます。

【医学情報について】

このブログは医学情報の提供を目的としており、

医学的診療行為ではありません。

具体的な治療判断については、

必ずご自身の主治医にご相談ください。

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