肺炎治療中、CRPが上昇し続けるのに「大丈夫」と言われる理由:医師の判断基準を医学的に説明

【疑問】

肺炎で入院になった。翌日には、さらにCRPが上昇しているのに、特に治療変更はなく、「大丈夫です。」としか言われない。本当に大丈夫なのかな?

そんな不安や不信を感じていませんか? 実は、医学的には理由があります。

【患者の視点】

昨日の晩に、入院になったけど、翌日の採血結果をみると、CRPは高くなっている。熱は下がっているし、なんとなく体も楽になった。先生に聞くと大丈夫って言われたけど。なんだか心配だな。

【医者の視点】

熱型をみると昨日あった、体温も下がっている印象だし、全身状態、呼吸数や酸素化、血圧、脈拍などのバイタルサインも問題ない。呼吸の音も明らかに悪くなっていない。咳とか痰の量も昨日より増加はしていない。CRPは上昇しているけど、全体的に考えると、数値が遅れて上がっているだけかな。このまま、現在の抗生剤を継続しよう。

【医学的背景】

[CRPが上昇しても治療が変わらない理由]

CRPが上がる=感染症や感染症の悪化を意味しない。感染症以外の原因でも上がる。CRP上昇は、気づきのタイミングとしては1つのきっかけになることはある。逆にCRPが上がらないから大丈夫ということもできない指標である。

[医師の中でのCRP の位置付け:なぜ医師は「気にしない」のか]

医師でも CRP にとらわれることがあります。これは医師教育の中で「特に注意すべき落とし穴」として強調されることが多いです。

感染症を専門とする医師からこっぴどく怒られた経験をした医師も多いでしょう。

しっかりと考えながら治療を行なっている医師は、CRP を気にとめつつも、メインには捉えないことが多いです。逆に説明に CRP のみを多用して説明をする場合には、気をつけた方が良いかもしれません。

[CRPとは何か:医学的定義]

CRPは、炎症や組織損傷に反応して肝臓で産生される急性期タンパク質です。感染症でも非感染症でも上昇します(1,3)。非感染症の原因としては、リウマチ性疾患、悪性腫瘍、組織損傷・壊死、炎症性腸疾患、薬剤反応などがあります。

[CRPの数値が示すこと]

CRP値が著明に上昇している場合(>10 mg/dL)、55.1%が感染症によるものです。CRP値が10 mg/dLを超える患者の80-85%は細菌感染症を有しており、35 mg/dLを超える場合は88.9%が感染症です(1,2)。

[CRPの時間的変化:なぜ遅れるのか]

炎症性または感染性刺激後

⏱️ 12~24時間後:CRP値が上昇し始める

⏱️ 48時間後:最大値に到達(4,7)

刺激消失後は速やかに低下

⏱️ 半減期19時間:値が半分になるまでの時間(5,6)

重要な点

炎症の原因がなくなった後でも、CRPはしばらく高いままの可能性があります

【まとめ】医師が「大丈夫」と判断する理由

CRP値に関する重要な事実:

・CRP が高い ≠ 治療が必要

・CRP が上昇 ≠ 感染症の悪化

・治療が効いている時でも CRP は上昇する可能性がある

医師が重視する判断基準:

・バイタルサイン(熱、血圧、脈拍、酸素化)

・臨床症状(咳の量、痰の量、呼吸音)

・全体的な経過

患者が理解すべきこと:

・「CRP が上がっている = 医師の判断が間違っている」ではない

・医師は複数の情報から総合判断している

・不安な時は「なぜ大丈夫と判断したのか」を聞くことが大切

【用語解説】

バイタルサイン:

血圧、脈拍、呼吸数、体温、酸素飽和度など、生命の基本的な活動を示す指標。医師は「CRP などの数値」より「バイタルサイン」の方が患者の状態を正確に反映すると考えます。異常が現れやすく、治療効果の判定に最も重要な情報です。

急性期タンパク質:

炎症や感染に反応して急速に産生される蛋白質。CRP はその代表例です。身体の「防御反応」を示します。

【引用文献】

1.        Gabay C, Kushner I. Acute-Phase Proteins and Other Systemic Responses to Inflammation. New England Journal of Medicine. 1999 Feb 11;340(6):448–54. doi:10.1056/NEJM199902113400607;WGROUP:STRING:MMS PubMed PMID: 9971870.

2.        Landry A, Docherty P, Ouellette S, Cartier LJ. Causes and outcomes of markedly elevated C-reactive protein levels. Canadian Family Physician. 2017 Jun 1;63(6):e316. PubMed PMID: 28615410.

3.        Mantovani A, Garlanda C. Humoral Innate Immunity and Acute-Phase Proteins. New England Journal of Medicine. 2023 Feb 2;388(5):439–52. doi:10.1056/NEJMRA2206346;WGROUP:STRING:MMS PubMed PMID: 36724330.

4.        O’Grady NP, Alexander E, Alhazzani W, Alshamsi F, Cuellar-Rodriguez J, Jefferson BK, et al. Society of Critical Care Medicine and the Infectious Diseases Society of America Guidelines for Evaluating New Fever in Adult Patients in the ICU. Crit Care Med. 2023 Nov 1;51(11):1570–86. doi:10.1097/CCM.0000000000006022 PubMed PMID: 37902340.

5.        Vigushin DM, Pepys MB, Hawkins PN. Metabolic and scintigraphic studies of radioiodinated human C-reactive protein in health and disease. J Clin Invest. 1993;91(4):1351–7. doi:10.1172/JCI116336 PubMed PMID: 8473487.

6.        Yousuf O, Mohanty BD, Martin SS, Joshi PH, Blaha MJ, Nasir K, et al. High-sensitivity C-reactive protein and cardiovascular disease: a resolute belief or an elusive link? J Am Coll Cardiol. 2013 Jul 30;62(5):397–408. doi:10.1016/J.JACC.2013.05.016 PubMed PMID: 23727085.

7.        C‐reactive protein for diagnosing late‐onset infection in newborn infants – Brown, JVE – 2019 | Cochrane Library [Internet]. [cited 2026 May 10]. Available from: https://www.cochranelibrary.com/cdsr/doi/10.1002/14651858.CD012126.pub2/full

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