【疑問】
採血結果で尿酸値に高値の印が付いているのに、 主治医は何も対応してくれない。 「何か悪い病気があるのではないか」 「この医者は何を考えているのか」 そんな不安や不信を感じていませんか? 実は、医学的には理由があります。
【患者の視点】
毎回、尿酸値が基準値以上で、検査結果に高値である印が付いているのに、なんで何もしてくれないんだろう。先生は、尿酸値が高いことに気がついていないのかな?友人は、尿酸値が高くて、薬を出してもらっているけど、この主治医は大丈夫なんだろうか?
【医者の視点】
毎回、尿酸値が高くて、患者さんは気になっていそうだな。○○さんは、痛風を1回も起こしていないし尿路結石の既往もないし、「いわゆる無症候性高尿酸血症(症状がない状態での尿酸値上昇)」なんだよな。無症候性高尿酸血症では、血清尿酸値が9 mg/dL以上でも5年以内に痛風を発症するのは20%のみだし、尿酸降下療法の利益は潜在的なコストやリスクを上回らないというデータもガイドラインに書いてあるしな1。すでに薬も多くて、ポリファーマシー(複数の薬を同時に使用している状態)気味だから、追加するメリットよりもデメリットの方が大きいかな。
【医学的背景】
高尿酸血症の場合には、痛風や尿路結石がある症状を伴う場合と高尿酸血症による症状が出ていない、無症候性高尿酸血症で治療がわかれます。
症状がある場合には、薬物治療を行うことが推奨されます。
無症候性高尿酸血症に関しては、欧米と日本のガイドラインで立ち位置が分かれています。
欧米のガイドライン(ACR, EULAR)においては、無症候性高尿酸血症を薬剤による治療をすることによるメリットが不明確というところで推奨はしていません。リスク・ベネフィットに対して、厳しい欧米では、ハードエンドポイントで良い結果が出ていない分、治療はしない方針ということです。
一方で日本のガイドラインでは、CKD進行予防や心血管イベント予防を目的として積極的に治療を検討されています。無症候性尿酸血症に対して、日本では治療薬が承認されているが、欧米では承認されていないという面もあります。
それでは、実際に日本の現状がどうかと言いますと、日本で新規に尿酸降下薬を処方された患者のうち、64.0%が無症候性高尿酸血症、36.0%が痛風の診断で処方されていたというデータもあり2、無症候性高尿酸血症に対しても治療がよくされていることがわかります。各種疾患のリスクや服薬状況などを加味し、医師によって裁量が分かれるところかと思います。
高血圧、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病では、尿酸値に限らず数値を下げること自体が、つい自己目的化している場合があります。
本来、その先に起こる死亡率や心血管イベントなどを下げることを目指すべき状況で、それらの効果の期待が低いあるいはできない場合には、治療するメリットとデメリットを勘案する必要があります。
【患者側でできること】
大原則に立ち返ると、高尿酸血症は生活習慣病の1つでもあり、生活習慣の見直しが最も費用がかからず、安全。高尿酸血症以外にもメリットが大きい治療です。こちらは、無症候性高尿酸血症でも実施した方が良いでしょう。
具体的には、
アルコール(特にビール)、肉類(赤身肉や魚介類)、清涼飲料水、コーラ、ジュースなどに含まれる高フルクトースコーンシロップの制限をする。
地中海食やDASH食、低脂肪乳製品、高繊維食、植物ベースの食事も有効です。
体重減少、運動も大事です。
面白みがないですが、高尿酸血症のみでなく、あらゆる面で健康になれるので、とても大事です。
【対策】
大原則ですが、食事・運動・体重減少が大事です。
無症候性高尿酸血症については、 以下の点を医者と相談した上で決める必要があります:
自分の症状の有無(痛風の既往、尿路結石の既往)
自分が使用している他の薬
生活習慣の改善の実行可能性
治療によるメリット・デメリット
【用語解説】
ポリファーマシー:複数の薬剤を同時に使用することを指し、最も一般的には5剤以上の定期的な薬剤使用と定義されています。必要な薬ばかりの場合もありますが、転倒や薬物相互作用、認知機能障害、機能低下、死亡率の上昇リスクとも関連しており、減らせる薬がないか常に確認する必要があります。
ハードエンドポイント:臨床試験において、死亡、心筋梗塞、脳卒中など、測定の仕方により評価が変わらない、客観的な評価項目を指します。
【引用文献】
1: FitzGerald JD, Dalbeth N, Mikuls T, et al. 2020 American College of Rheumatology Guideline for the Management of Gout. Arthritis Care Res (Hoboken). 2020;72(6):744-760. doi:10.1002/acr.24180
2: Kurajoh M, Akari S, Nakamura T, et al. Seasonal variations for newly prescribed urate-lowering drugs for asymptomatic hyperuricemia and gout in Japan. Front Pharmacol. 2024;15:1230562. Published 2024 Jan 16. doi:10.3389/fphar.2024.1230562
【医学情報について】
このブログは医学情報の提供を目的としており、
医学的診療行為ではありません。
具体的な治療判断については、
必ずご自身の主治医にご相談ください。
